グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



Home >  対象疾患について >  うつ病について

うつ病について


【うつ病の特徴】

1) 気分の落ち込み(抑うつ気分)

ゆううつで、気持ちが晴れない、気持ちが落ち込んだ状態です。本人の言葉や表情、元気のない様子から周囲も異変に気付く場合があります。  抑うつ気分は1日の中でも波がみられることが多く、朝方は最も気分が落ち込んで、午後から夕方にかけて症状が軽くなることがあります(日内変動)。
また、「仮面うつ病」という抑うつ気分がほとんど目立たないタイプのうつ病も存在します。まじめで責任感の強い人の中には「他人に弱音は絶対に吐けない」「元気のないところを見せるわけにはいかない」とうわべを取り繕って元気なふりをしてしまいます。元気な仮面をつけているようなので「仮面うつ病」と呼ばれます。こういう場合は体の症状に強く出ることが多く、激しい下痢や胃の痛み、頭痛、腰痛などで悩んで内科を受診しても異常がないため心療内科を紹介されることがあります。

2) 意欲や興味の低下

物事への興味や関心、喜びが感じられなくなる状態で、この状態になると日々の生活がとても味気なくつらいものになってしまいます。これまで楽しかったはずの物事に対し、関心が著しく低下してしまうため、全く何もする気になれなくなります。
「何をしても面白く感じない」「好きだったことに興味が持てない、面倒だ」「以前あんなに楽しかったテレビ番組も観る気になれない」「人と話すのがおっくうだ」など、周りから見ると、まるで人が変わってしまったようになります。家でぼんやりと活気なく過ごすことが多くなり、外出の頻度が明らかに減っていきます。

3) 食欲の低下もしくは過食

うつ病では食欲の低下が多くみられます。しかし「何か食べないといけない」という思いから、無理やり食べていることもあります。その場合、美味しいと感じることは少なく、「砂をかむような味気なさ」と表現されることがあります。食事量が減れば体重が減ってしまうため、体調はさらに悪くなり、特に疲れやすくなります。
また反対に、甘い物ばかり食べたり、過食にはしる場合もあります。

4) 眠れなくなる(睡眠障害)

うつ病では睡眠の質が悪くなります。寝つきが悪い(入眠困難)、夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)、予定よりも1時間以上も早く目が覚めてそのあと眠れない (早朝覚醒)などの種類があります。 特に「早朝覚醒」は比較的うつ病に特徴的と言われています。満足な睡眠がとれない状態が続くと、疲労が抜けず体の調子がみるみるうちに悪くなっていきます。朝起きた瞬間から「疲れ切っている」と感じることもよくあります。

5) 頭がぼーっとする(思考抑制)、集中力がない、物事を決められなくなる

頭に霧がかかったようにすっきりせず、ぼんやりしてうまく考えられなくなるなどの頭の回転が遅くなった状態です。集中力や注意力が散漫になり仕事や勉強、家事が思うように進まなくなったり、全く出来なくなったりします。思うように集中して取り組めないので以前のようにテキパキ動けず、仕事でミスが重なってしまい、さらに落ち込んでしまいます。
また、集中力が低下することで車の運転が怖くなったりもします。決断力も大きく低下します。少しのことでも考え込んでしまうため、何も決められなくなることがあります。夕飯のメニューを決められないなどの日常的なことから、仕事上の決定や部下への指示なども躊躇してしまいすぐに出来なくなります。こうなると本来の能力で仕事が進められなくなるので、どんどん仕事がたまってしまいます。その結果、残業時間と疲労ばかりが増えることになってしまいます。
身の回りのことがうまく決められなくなると、冷静さを失って逆に突拍子もない決断に至ることがあります。「自分は価値のない人間だからもう死ぬつもりだ」「家族に迷惑だからまずは離婚しないと」などと考えることもあります。

6) 動作が遅くなる(行動抑制)

思考抑制が頭の回転が遅くなった状態なら、行動抑制は体の動きが遅くなった状態です。周囲からはっきり見て分かるくらいに、まるでロボットのように体の動きが遅くぎこちなくなったり、口数が減ったり、声が小さくなったりします。
朝の支度などの日常的な動作にさえ、かなり時間がかかってしまいます。行動抑制が強くなってくると、いよいよ元気の残りが少ないと考えられます。心と体の限界が近づいていますから、出来るだけ早い治療が望ましいと言えます。

7)不安や焦燥感、イライラ

不安や焦燥感、イライラはうつ病だけにみられるわけではありませんが、ほとんどのうつ病に合併するとても重要な症状です。「胸のあたりが詰まったようで苦しい、落ち着かない」「月曜日のことを考えるとどうしたらいいか分からなくなって不安だ」「会社で言われたことが気になってしまって頭から離れない」「何かに追い立てられるような感じがして居ても立っても居られない」「焦ってじっとしていられない感じ」などです。不安や焦燥感が強いと例え休養したとしてもゆっくりと休むことが難しくなります。
また、特にお年寄りでは焦燥感が強いタイプのうつ病が多い傾向にあります。診察室でも椅子に座ってお話しするのが難しく、たまらず立ち上がってうろうろと歩き回ったり、せわしなく体を動かしたり、何を尋ねても「困った困った」以外答えられないこともあります。

8) 自分を責めてしまう

特に理由もなく過剰に自分を責めたり、誰も気にとめていないような些細なことを思い出してはくよくよ悩んでしまうことがあります。 また、必要のないことまで自分の責任のように感じてしまい、「自分は要らない人間だ」と強く思うようになったりします。

9) 死にたいと思ってしまう(自殺願望、希死念慮)

生きていることがつらく、死んでしまった方がましだと考えてしまう症状です。うつ病で最も気をつけなければならない症状です。 うつ病の症状があまりに重い時期には、死にたい気持ちがあっても行動におこす気力すら残ってないのである意味安全ですが、治療によって少し元気が出始めたころには要注意です。
うつ病の治療の経過では、死んでしまいたいという気持ちが繰り返し患者さんの気持ちの中に湧いてきます。自殺したい気持ちが非常に強いときは、入院して経過を観察することもあります。

治療

1)休養をとる

うつ病では、脳が疲れ切って、エネルギーが著しく低下した状態になっています。電池切れの電子機器に例えられるくらいに脳も体も活動性が低下してしまいます。バッテリー切れのスマートフォンは決して気合や叱咤激励では動かないことを理解しましょう。元気を充電すること(休養すること)がなにより必要です。具体的には、良質な睡眠と良質な食事をとるように工夫していきます。この2つに元気の素が隠れています。そしてこれ以上エネルギーを減らしてしまわないように、休養をとるようにします。脳や体の負担を軽減することが大切です。

もともと、真面目で几帳面、仕事熱心で責任感の強いタイプの方がうつ病になりやすい傾向にあるため、休養をとることは簡単ではありませんし、周囲に迷惑がかかると言って断固拒否される方もいます。しかし、脳が疲れているにもかかわらず休養を取らないでいると、さらに脳が疲弊し、症状が悪化するのは目に見えています。最終的には、突然倒れて全く反応のできない状態「うつ病の昏迷」という最も重篤な状態になることがあります。こうなると入院となってしまいますし、もちろんその期間は仕事や家事が全くできません。

お仕事をされている方には、積極的に休養・休職をすすめ、主婦の場合には他の家族に家事を分担してもらうようにすすめます。症状がそれほど重症ではない場合でどうしても仕事を休めないような状況では、仕事量や就業時間、残業を減らして負担を軽くするよう診察の中で考えていきます。

2)薬による治療

良質な睡眠と良質な食事が治療には必要ですが、うつ病の方はこの2つがうまくできない方がほとんどです。薬はこの2つを手助けして、病気の改善をより早くより確実にするものと考えましょう。症状によって使い分けますが、主に抗うつ薬、抗不安薬(安定剤)、睡眠薬(睡眠導入剤)の3つが中心となります。

抗うつ薬は、脳の中のセロトニンやノルアドレナリンという物質の数を増やしてそのはたらきを高めます。抑うつ気分や思考抑制、不安、緊張、焦燥感を取り除くというような効果を現します。うつ病の根本的な治療は抗うつ薬が主体となります。抗うつ薬は2000年以降に採用された比較的安全性の高いもの(SSRI、SNRI、NaSSA)が現在は主流で、さまざまなタイプの薬があるので、ひとりひとりの症状にあった薬を使います。
まずは少量から飲み始めて1週間から3週間の期間で必要な量まで増やしていきます。そして、服薬を始めてすぐに効果が現れるわけではなく、2週間を過ぎたころから少しずつ効果が現れはじめます。通常であれば治療を始めてから数カ月~半年くらいである程度よくなりますが、その後も再発予防のために服薬を続けることが必要です。
残りの2つの薬、抗不安薬(安定剤)は不安や焦燥感に大きな効果があり、睡眠薬(睡眠導入剤)は睡眠障害に有効です。

内服に抵抗がある方が多いのですが、適切な治療をしっかり行う方がより早くしっかりと症状が良くなって、早く元気な頃の暮らしに戻ることができます。